ボルカルス

レビュー黒菱 シンカ


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5
On 2020年9月23日
Last modified:2020年9月19日

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 富士の火口から突如その姿を現わし、首都東京に襲い来る巨大怪獣ボルカルス。恐るべき巨大怪獣に対抗するため、日本政府は急遽、怪獣緊急対策本部を設置。おおきく被害の拡がる中、起死回生の攻撃作戦を決行していく──。といった「巨大怪獣と日本政府の決戦」をフレーバーにしたボードゲーム『ボルカルス』を、今回は紹介したい。

消防総監となってボルカルスに立ち向う光景

プレイ人数:2~4人
プレイ時間:60分~80分
対象年齢:10歳~
デザイナー:上杉 真人(I was game)
怪獣デザイン:中北 晃二
アーティスト:関田 裕治,中村 豪志
グラフィックデザイン: 宇佐美 詠子
フィギュア制作:ジャイアントホビー


 ここ最近で遊んだ「一対多に分かれて遊ぶ」ゲームの中では抜群に面白かった。プレイヤーの1人がボルカルスとなって暴れ回り、ほかのプレイヤーたちは人類を守る政府の一員となって、それを食い止めていくゲームだ。

それぞれの役職ごとに決められたアクションとカード

 人類側プレイヤーたちは、内閣官房長官、統合幕僚長、研究総務官、消防総監、の4種類の中から役職を選ぶことができる。それぞれの役職ごとに決められたアクションカードをもらい、山札を準備。同じく、怪獣ボルカルス役のプレイヤーも怪獣用アクションカードをもらって、山札とする。
 この山札から手札を引いて、「計画ボード」の上に、順番に配置していくのが、ゲーム進行の主軸だ。
 置かれたカードごとに1つのアクションが実行されるようになっているのだけど、それらのアクションが実行されていく過程において、人類側のアクションの合間合間に、怪獣のアクションが挟まってくる。というのがこのゲームのアクションにおけるおおきなポイントと言える。

矢印の順番でアクションカードがめくられて実行される

 簡単に言えば、人類が効果的な作戦を遂行させたそのすぐあとに、効率的にそれを妨害してみせるような手を、怪獣ボルカルスは打つことができる、のだ。もちろん、カードは裏向きに配置されるため、そのカードアクションがなんであるか、怪獣側には正確にはわからないのだけど、それでもまあ、意外と推測はできたりする。
 政府側の相談──プレイヤーの意思疎通、は、ボルカルス役プレイヤーの「目の前」で口頭で行なわなければならないからだ。しかも時間制限まであって、そのわちゃわちゃした相談を、ボルカルス役プレイヤーは、めっちゃ聞いている。
 怪獣ボルカルスは人類の意思を嗅ぎとるような習性でもあるんだろう、なんて勝手に思っている。設定上「自然現象」の範疇であると語られているボルカルスのイメージにも似合う気がするし。でもって、この「相談」システムを逆手にとって、怪獣側を騙すことだって可能、というところも非常に好きなところだ。

防衛トラックと被害トラック(人類側がギリギリの勝利を迎える瞬間)

 勝敗を決めるため、2つの「トラック」が用意されている。
 人類側には「防衛トラック」、怪獣側には「被害トラック」が用意されていて、ここのマスを先にすべて埋めることができたほうが勝利となる。
 ゲームの進行的に言えば、人類が救った市民や、消火した溶岩、そして後半になって開発される冷凍ミサイルによる怪獣へのダメージなどが、人類の得点として「防衛トラック」に貯まっていき、逆に、怪獣ボルカルスが踏み潰した市民、まき散らした溶岩、壊滅させた地域などが、怪獣側の得点として「被害トラック」に貯まっていくようになっている。
 怪獣のほうが埋めるべきマスが多く、ぱっと見だと人類側有利にも見えるのだけど、実際のところ、怪獣ボルカルスの脅威は強大で、びっくりするほど簡単にトラックが埋められていってしまう。最初は「こんな相手に人類がほんとうに勝てるんだろうか……」とおののかされるしだいだ。人類が巻き返していくのはおおむね後半、研究開発が進み、新兵器や新技術が解禁されたあとで、ここのバランス調整が素晴らしくよく出来ている。


 

ボルカルスが進化の方向も選べる

 このゲームのシステムで最も好きなところは、この「防衛トラック・被害トラック」の、見せかた、埋めさせかた、バランス調整、かな、という気がする。ここが目的・目安として見通しやすくなってくれているおかげで、全体を通して非常にプレイしやすくなっている。と同時に、たとえば冷凍ミサイルといったフレーバーについて、その威力を実感しつつ、敵プレイヤーに対する直接攻撃要素、ではないように見せてくれたりもしている。

 予算申請というアクションの持つ重要性も、好きなところだ。人類側はなにをするにもお金がかかり、うまく予算申請をおこなって資金を回しておかないと、最後にはなにもできなくなる。という具合を眺めて、マジで人類のありかたっぽいなあ、ってなるのがまず好き。資金が本当に「ぐるぐる回る」アートワークで描かれているところも好き。
 システム的な側面で言えば、人類のアクションの基盤を予算申請に置いたことで、怪獣側もそれを狙い撃ちしていくような目線を持つことができていて、その軽重のバランスの付けかたが素晴らしい、とも思う
 巨大怪獣に対抗すべく行なう人類の作戦行動、その中における重要性、というものにおいて、どのあたりの作戦が基盤になるかなー、って考えた時に、予算申請、ってフレーバーに目が行く発想、非常に素敵だ。

東京の街々に溶岩がばらまかれていく

 この『ボルカルス』は、Kaiju on the Earthと呼ばれるプロジェクトのゲーム第一弾で、いまの日本を代表するボードゲーム、として開発されたようだ。実際、遊んでみて、お、このプロジェクト、第一弾から大成功なんじゃないか、と思わされる出来栄えだった。すごくおもしろいゲームがちゃんと出てきてくれて嬉しかったし、実際にも、たくさん売れて好評を博しているようだ。
 怪獣という題材が日本的なものであるとはこれまで認識していなかったというか、巨大怪獣モノって個人的にあんまり触れてこなくて新鮮な味わいだったのだけど、一対多に分かれて怪獣と戦うフレーバーって非常に楽しいな、と、今回のゲームではしっかり気づかされた。今後も気になるシリーズだ。第二弾第三弾も楽しみにしている。というか第二弾『レヴィアス』はすでに発売済みなので、早く遊びたい気持ちだ。

 余談ですが、Kaiju on the Earth第三弾に関して、現時点だとイメージイラストだけが発表されていて(2020年9月現在)、森林のイメージのようなのだけど、火山、深海、森林、という流れに対して、もしかして火→水→木、という順序になっているのかな、なんて勝手に思っている。なので、その次は「金」なんだろうか、って想像していたりもする、のだけど、当たっていたりするだろうか(とはいえ、曜日の順序だと考えるなら、最初の「月」が抜けているのでは?)(月の怪獣って美しそうでよい気はする)。

 Kaiju on the Earthは、まず第三弾まで出したあと、好評であればそのあとも続くかもしれません、というようなお話でもあったかと思うので、第四弾以降の作品も期待しちゃうところではあります。あとは普通にボルカルス拡張なんかも欲しいしな……。そもそも第三弾のデザイナーが、『横濱紳商伝』や『ヘンゼルかグレーテル』のデザイナーであるあの林尚志さん(OKAZU brand)なので、早く第三弾が見てみたい! ともなってます。
 Kaiju on the Earthプロジェクト、おすすめです。

ボルカルス / Volcanus

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