聖杯サクセション

レビュー黒菱 シンカ


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4
On 2020年7月2日
Last modified:2020年7月4日

Summary:

https://www.suruga-ya.jp/database/pics_light/game/607504055.jpg

すべて集めたら即座に勝利できる聖杯カード3枚(右上)

相手に二択をせまりたい

 基本的には勝利点トップを競い合うようなルールで進行していきつつも、それとは別に、達成した瞬間に勝利/敗北が決まってしまうような絶対的なルールが用意されていて、そういう異なる危険性を気にしながらゲームを進めていく、といったボードゲームのメカニクスがかなり好きだ。その別の勝利条件をうまく活用して相手に(いやな)選択を迫っていくのがとても楽しい。迫られるのも楽しい。背後に見え隠れする即死への緊張感が素敵なアクセントになってくれていて好き、という感じ。

 強いて難点を言うなら、二人用ボードゲーム以外ではあんまり見ることのないメカニクス、っていうことかなあと思っている。まあ、三人や四人で遊んでいる時に「これを満たしたらその瞬間に勝ちです」ってルールがあったりしたら、誰かが邪魔しないといけない、といった盤面が生まれやすくなってしまって、そのへんの調整が難しそうには思える。ので、しかたがないか、とも思う(瞬間的な勝利条件がなくても似たような状況を迎えることはもちろんありますけども)(この局面でその資源取らせたら、もう一位確定しちゃうじゃないですかー、的な……)。

 というような「その瞬間に勝利」というルールを盾にしながら相手に選択を迫る/迫られる、というのが手軽に楽しめる二人用ゲーム、『聖杯サクセション』を今回は紹介したいと思いました。

5~8の勢力カードは数値と同じ枚数が含まれている

【タイトル】聖杯サクセション
【デザイナー】シマムラナオ・ドウゲンノブタケ
【イラスト】ツクダヒナミ
【プレイ時間】10〜20分
【プレイ人数】2人
【年齢】10歳〜

大気圏内ゲームズの傑作二人用ゲーム

 この『聖杯サクセション』はゲームマーケット2016秋でサークル「大気圏内ゲームズ」より頒布された作品。以前に頒布されていた『キャットファーザー』がよい2人用ゲームだったので、こちらも楽しそう、と期待しつつ購入したのを憶えている。

 実際に遊んでみて、想像を越えてくるくらいおもしろかったので、これはいずれ、どこかのメーカーから製品版として出てくるんじゃないかな、と期待していたら、海外で『チョコレート工場』として発売されていました。チョコレートデザインのカードの美味しそうなやつ。しかも日本でも、日本語訳付きが2020年6月にEngamesより発売。出たばかり!(現時点)

こちらは『チョコレート工場』 カードがデカイ

ゲームシステム

 ゲームシステムとしてはシンプルで、互いに5枚ずつの手札を持ち、その手札から1枚ずつ、交互に、場にカードを置いていくだけ。カードは自分・相手の区別なく、すべて一列に並べて行きます。相手と自分のカードが、基本的には1枚ずつ、積み重ねのように、横にならんでいく形。

 ポイントになるのは、手番で1度だけ、場に並んだカードの「新しく置かれたほうから5枚」を獲得できる、というところ(場に5枚出ていない状況だった場合は、場に置かれているカードをすべて獲得)。

 この、カードの配置5回、と、カードの獲得1回、の6回のアクションが1ラウンドになります。このラウンドを4ラウンド繰り返して、最終計算後の勝利点が高いほうが勝利。

ここで獲得アクションを行なうと、右側から5枚が獲得できる

聖杯をすべて集めたらその瞬間に勝ち

 ただし冒頭でも述べた通り、このゲーム、即座に勝利を得ることのできる条件が一つあります。それが「聖杯」をすべて集めること。フレーバーとして聖杯は三つに割れてしまっている形になっていて、つまり、聖杯カードというものがこのゲーム内には、3枚、用意されています。これをすべて自分のものとして獲得することができれば、そのプレイヤーはその瞬間に勝利が確定。

 なので、おたがいに相手に3枚の聖杯カードが行き渡らないよう気を配りながらカードの配置/獲得を行なっていくことになります。マイナスカードばかりが並んでいても3枚目の聖杯が含まれていたら取らざるを得ない局面が現れたりする(また、ゲーム前にランダムにカードを3枚抜き取るので、待っていてもぜんぜん最後の聖杯が出てこないこともある)。

数値の調整がスゴイ

 といった瞬間的な勝利条件を満たさせないよう互いに振る舞うことになるため、最終的にはやっぱり勝利点での決着になりがちで、この、勝利点に関するカードバランスのよさが、このゲームを素晴らしいものにしているところかなと思います。めちゃくちゃジレンマの利いてくる枚数調整になっている。

 獲得することで5点/6点/7点/8点が得られる「勢力カード」というのがまずあるのだけど、このカード、相手とマジョリティ勝負(どちらが多く取っているかの勝負)をして、多いほうだけが得点を得られる、というルールだったりする(さらに5点のカードは5枚、6点のカードは6枚~、というふうに、全体枚数によって高得点のカードほどマジョリティを確定しづらくなっている)。


 なんていうふうに「勢力カード」の攻防が主軸になるような雰囲気でありつつも、1枚だけで勝利点がプラスマイナスされてしまう「プラスカード」「マイナスカード」というものが別に用意されていて、こちらもまた、かなり重要だったりする。マジョリティさえ取ることができれば「勢力カード」はもちろんおおきな得点につながるのだけど、とはいえ5点~8点の4種すべてのマジョリティを取るというのはほぼ不可能なので、結果的に「勢力カード」での勝利点の差はとして、「プラスカード」「マイナスカード」での調整が必須になってくる。

 といった危険性を脇に置いておいて、聖杯を無理矢理にでも三つ集めるという狙いも当然可能だ。このへんの駆け引きが非常に楽しい。

完全に6を取ってくださいと誘っている局面

 ちなみに、ほかに、5/6/7/8の「勢力カード」を1枚ずつセットで揃えることでセットボーナス5点が獲得できたりもする。相手のマジョリティがほぼ確定しているような状況であったとしても、勢力カードを取ることにメリットが生まれたりするので、いやここも上手いな……、って思わされる。

 1ラウンド中に「獲得アクション」は一回しか行えない、というのがかなりキモで、相手が「獲得アクション」をしてくれれば、そのあとは、自分の手札を場に置いて、その次の手番で、その置いたカードを含めて獲得する、という流れを狙うことができる。3枚目の聖杯が自分の手札にあるならば、そんなふうに、邪魔できない状況を作ってしまうことも可能なのだ。という「相手の獲得アクション待ち」を読まれてしまって逆に詰まされてしまうことももちろんある。

海外製品版はチョコレート工場

海外版はカードがデカイ(2回目)

 といった「瞬間的な勝利条件」と「カードごとの勝利点のバランスの素晴らしさ」で、短時間で遊べる二人用ゲームの傑作として出来上がっている『聖杯サクセション』、いまならEngamesさんから出た『チョコレート工場』を買うこともできるので、非常におすすめです(2020年6月)。

 二つの勝利条件の狭間で競い合う、みたいな雰囲気になるせいか、ギスギスしづらい感じがあるのも素敵なところかな。

 余談ですが、この『聖杯サクセション』が出た当時、大気圏内ゲームズさんがデザイナーズノート的なやつを書いてくれていたのだけど、続きとなる第2回が公開されなかったので、いまだに待ってたりします、ということだけ、最後に書いておきたいな、と思いました。たいへん面白かったです。

聖杯サクセション

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